経済的徴兵制、米の中流層も 国際ジャーナリスト・堤未果さんに聞く 

 貧困層の若者が兵役を選ばざるを得ない構造的な問題を、欧米では「経済的徴兵制」と呼ぶ。日本も同様な状況が広がるのか、著書「ルポ 貧困大国アメリカ」で米国の実態を描いた国際ジャーナリスト堤未果さんに聞いた。

 (聞き手・中野祐紀)

 米国では、一九八〇年代のレーガン政権時代に経済的徴兵制の萌芽(ほうが)があった。あらゆる分野に競争の発想が持ち込まれ、生活費、医療費、教育費の三つが高騰。負担に耐えられず軍に入る道を選ぶ経済弱者の数が急速に増えた。レーガン的な市場原理主義は、日本でも(八二年の)中曽根(康弘)政権以降、さまざまな政策に取り入れられ、同じ流れをたどっている。

 経済的徴兵制の標的が貧困層だけではないことを知ってほしい。米国では「自分は中流。大学に行くのは当然だ」と考える層が、選択肢を奪われ、経済的理由で入隊を選んでいる。教育の市場化で学費が高騰し、今や私大の学費は四年で二千万円と法外だ。若者は学資ローンに頼るが、給与は年々下がっており、負担は増すばかり。軍が事実上の借金肩代わりをエサに、若者を勧誘している。中流意識が良い「カモ」になる時代が、日本にも来ると考えるべきだ。

 中東で大きな犠牲を払った米国では、厭戦(えんせん)ムードがまん延し、米兵の死を嫌う雰囲気が強い。犠牲の一部の肩代わりを自衛隊に求める発想が出てくる。安倍政権の安全保障関連法整備は当然、これに連動したものだし、軍関係者の支持で成立したトランプ政権はさらに圧力を強めるだろう。

 米軍の戦争の下請けに駆り出されて戦場に出る自衛隊に、経済的余裕や他に選択肢がある人が入隊するだろうか。自衛隊が求人に窮し、経済的徴兵制の動きがより進む恐れは十分ある。

 <つつみ・みか> 1971年、東京都生まれ。ニューヨーク市立大大学院で国際関係論学科修士号を取得。国連、米国野村証券などを経て国際ジャーナリストに。米国の政治、医療、教育、福祉、農政などを取材する。